――― 王の力はお前を孤独にする。

――― では問おう。孤独とは何だ?

魔女の質問に王の力を宿した者は笑った。
彼は魔女が過去契約を結んだ人間の中でも、格段に頭の良い人間であった。
だからこの遣り取りにも、少しの退屈凌ぎが期待できた。
魔女の予想通り、彼は数瞬の思考の後、魔女に答えてみせた。






【孤独に対する愛と偽者の回答】






誰からも理解されないこと。
誰からも愛されないこと。
誰からも信じられないこと。

彼の王の力は絶対遵守の力であった。
人に対して行使される、背くことのできない命の力。
もしこの力が大勢の人に知られれば、どうなることだろう。

おそらく彼と人の間には晴れることのない疑念が横たわるだろう。

私は彼が好きだと思う。
私は彼が嫌いだと思う。

思うという意志の前にして人は自らに問いかける。
それが自らの本当の意志であるか、果たして不可侵の力によるものか。

さすれば彼は本当の意味で誰かの理解を得ることは出来ないし、
誰かの心からの愛を受けるに足る存在ではなくなる。
そして疑念の前に信は何の力を持たない。


だが果たしてそれは孤独であろうか。


人と人の間に越ええぬ溝を作り、生涯自らを独りにすることを孤独と呼ぶなら
孤独とは何とも易しいものだ。人は、本来生まれてから死ぬまで孤独である。

誰かの理解を得た。何故そんなことが分かる?
誰かの愛を得た。何故そう思った?
誰かが自分を信じた。それを、何故お前は信じるのだ?

人は常に自分の前にある他者という幻想を前にして判断しているにすぎない。
本当は分からないものを、本当は分かった気になって、そしてそんな自分に見て見ぬ振りをする。

それなら今更、自らの存在が他者によってどう判断されようと何だというのだろうか?

故に、そんなものを孤独とは呼ばない。
人が孤独でない、ということこそ幻想だ。
幻想を前にそれを幻想と知らぬ者は自らの存在そのものを知らぬ者だ。
故に孤独とは、


――― 自分の存在を認識するための、最も有効な手段だよ。


そして魔女は笑った。
満足げに微笑んだ。
人の感情など幻想だと、全て人は孤独だと吐く人に向かって笑った。

この誰よりも人を愛そうと止まない人に向かって、聖母のように。



孤独は状態だ。状態そのものであって、それ以上でもそれ以下でもない。
ならばそこに生まれる感情とは、全く無縁であろう。
人は常に孤独という状態に置かれている。何もない場所にいる。
そんな場所の、どこが素晴らしい場所であるだろうか。

寂しいに決まっているのだ。

だから人はその存在を良しとしつつ、速やかに去ろうと努める。
孤独に長居は無用だ。

一瞬の孤独が自己認識の最も有効な手段であるなら
悠久の孤独は自己破壊の最良の道具となるだろう。


そして王の力が生み出すものは、永久の孤独。


――― 寂しさを押し込めて縋る孤独に、意味などないよ。



魔女は笑う。
何よりも孤独と付き合い寂しさに人生を支配された彼女は、
今孤独になることを運命づけられた彼に向かって笑った。
それは彼女の、彼に対する精一杯の愛だった。


――― ルルーシュ、答えをやろう。
――― 孤独とは、








――― お前が誰一人愛さなくなった時に手に入れるものだよ。








それが心を殺した結果か、心に殺された結果かどうかまで私には分かりはしないが。









end