※十二国○パロです。
※毛色の都合上(…)スザクが主でルルーシュが麒麟です。
※深く考えないで読みぶっ飛ばしてください。(…)
窓から名月が見える。雲一つ無い濃紺の宵闇を美しい円が煌々と照らす様は非常に美しく、スザクは存分に愛でながら自分の髪を梳く愛しい人の手管に酔いしれる。体は寝台の上、頭をルルーシュの膝の上にのせながらスザクはうっとりと目を閉じた。瞼の裏に月の残像が浮かび上がり、自分の頭を撫でる指の感触がより鮮明になる。気持ちいい、とスザクは心の中で呟いた。
「・・・いつまでこうしているつもりですか？」
「ん？いつまでも。」
至極楽しげに言い放てば巫山戯るな、という声が聞こえてきそうなぐらい重い空気がのし掛かった。しかしそれをスザクは特に気にすることもなく、膝の体温に擦り寄るように頭を捩った。太股を撫で上げれば小さな反応が返ってくる。スザクはルルーシュが抵抗しないのを良いことにじっくりとその行為に没頭した。主が許しを与えない限り、麒麟に抵抗する術はない。自分でも意地の悪いのを自覚しながら、それでもスザクはその制約を存分に利用する。昼間執務で散々いびられた意趣返しだ、と全く理由にもならないような事を呟いて。
「それにしてもさ・・・。」
「･･････････。」
「麒麟は主の気配が分かるのに主は麒麟の気配が分からないって狡くない？」
その質問にルルーシュは無言で応える。スザクが言いたいのは、要するに執務中に抜け出しても直ぐ見つけられる事への不満だ。麒麟は王気が分かる。だから王の居場所も直ぐに分かってしまう。その逆に王は特に麒麟の気配が読めるわけでもないからして、スザクはこの広い宮殿の中でルルーシュを見つける手立てが無いのだ。人に聞けば麒麟の居場所などすぐ分かるだろうが、そんな質問をすれば人に見つかる。人に見つかってはいけない状況になるから悪いと思うのだが。堂々と執務を終えてから来てください、と言えば案の定気にした様子のないスザクはまた軽快に話を進めるのだ。横暴で自己中心的で図太いヤツだ、とルルーシュは溜め息が漏れそうになるのを押さえ込む。結局はね除けようと思えばできなくもない”お願い”をされて素直に従っている自分は、この主が嫌いではないのだ。自嘲したくなる。
「真面目に仕事しないと失道しますよ？」
「優秀な麒麟がいるから大丈夫じゃないかな？」
ぐるっと膝の上で頭の方向を変えたスザクがルルーシュを見上げる。そしてその黒髪を梳き上げて嬉しそうに微笑んだ。自分の髪をおもしろそうに触る主に対して、ルルーシュは先ほどまで動かしていた手を止める。何故かこの主は自分に頭を撫でられるのが好きなのだ。理由を尋ねた事はない。ただ望まれるままにルルーシュはスザクを抱きしめてその頭を撫でた。その度に気持ちよさそうに目を伏せて笑みを溢すスザクを、ルルーシュはその時ばかりは麒麟の名に相応しく慈愛の眼差しでもって見守った。
「それにルルーシュと一緒に死ねるなら失道してもいいかな、って思うし。」
「玉座について三年にもならないくせに何を言って下さってるんですか。」
「敬語崩れてるよ？」
うふふ、と実に楽しげにスザクは微笑んだ。人を弄ぶ事に享楽を見いだす、歪んだ王の気質。傲慢な微笑みは人の上に立つ者の特権だ。そして須く逃れざる吸引力を誇る。ルルーシュは自分が常にスザクの腕の中に囚われる所有物であることを感じながら、それに不快感は感じなかった。望まれれば従い腕を示されれば素直に取り、そうやって段々とスザクから逃れられなくなる。従うことが自分の生まれ出た麒麟という質によるものなのか、最早形も分からない程溢れ出た単純な愛によるものなのか。判別も付けられぬままルルーシュは体が赴くままにスザクに求められることを良しとした。ルルーシュが、夜の欠片のようだと称された紫の瞳を細めて微笑めばスザクは手を伸ばし瞼に触れる。そして夜空を手にすることも可能だと言わんばかりの不遜な笑みで、また倫理を欠いた言葉を紡いだ。
「俺は国より民より、ルルーシュが好きなんだ。」
不誠実な王に口づけを、と言われルルーシュは口づけを捧げる。素直な麒麟を褒めるようにスザクは漆黒の髪を撫でる。王に触れられればそれだけで麒麟は気持ちよさそうに目を伏せる。開いた緑の両眼でその様子を見つめ、スザクは心の中を駆け上がる独占欲という名の貧しい感情に抵抗もなく従った。ただ貪欲に深く繋がる為の行為なのに、それを知らない麒麟。拙くも必死で応じようとするルルーシュをスザクは芯から甘く溶かしていく。なんて可愛い生き物。なんて哀れな生き物。なんて、愛しい生き物。何処までも王の、
「だからルルーシュも俺を一番愛するんだよ？」