※十二国○パロです。
※スザクが主でルルーシュが従です。
「ルルーシュ…。」
「何ですか、クロヴィ」
「兄様と呼んでくれ。」
「はい、クロヴィス兄上。」
湖面で魚が跳ね、静寂の合間に一瞬の音を落とす。無駄な照明をおとし、月光と微かな蝋燭の光だけを灯したテラスで麒麟二人は酒を飲み交わしていた。小さな卓をはさみ、つまみに杏子などの実をおいて行われる会話。夜のせいではなく、クロヴィスの面持ちは沈痛だった。その肩にのし掛かる苦労という名の重しの総重量を考えれば当然だろう、とルルーシュは思いながら。
「やはり私は麒麟に向いてないのではないかと思うのだよ、近頃。」
「そんな、兄上は立派に補佐をしておいでではないですか。文化芸術での功績、私も最近耳にしましたよ。図書館を修繕したり学生への重要書物の解放を進めたり素晴らしいことではないですか。」
慰めながらこんな事では慰められないだろうなぁ、とルルーシュは冷静且つ客観的に結論づける。予想通りクロヴィスは曖昧に笑って溜め息をついた。そもそも麒麟が向いてない、とはどういうわけか。麒麟は生まれた時から麒麟であるから、どう逆立ちしても麒麟以外なりようがない。麒麟という運命を逃れようと思ったら死ぬか生まれ直すか生まれ変わるかどれかしかない。いずれにしてもクロヴィスという存在はこの世から消え去るわけだ。そこまで思い詰めるとは、かなり重傷である。
「今回も式典とかその他諸々重要かと言われればそうでもないけれど大切なお仕事があったのにまた主をとめられなかったし…。」
「それぐらい私もいつものことです。」
「お忍びがいいからと口止めされて片棒をかついで、また事後報告して怒られるのは私なんだ…。」
「それぐらい私もいつもの…。」
「王の半身だといっているのにそんなのは知らんとばかりに弄り倒されるし。」
「それは諦めましょう。」
聞いて答えてる内に何だか自分の気分も下がってきたように感じるルルーシュであった。身にしみすぎて有り難くないが現実味がありすぎる相談事。これが突拍子もなければ慰めつつも笑い飛ばせるのだが我が身に現在進行形で降りかかっている事ばかり。ただルルーシュとクロヴィスの間に違いがあるとすればひたすら放置されるかひたすら構い倒されるかの一点のみだがそのどちらが良くてどちらが悪いかは一概に言えない。双方主張はあり、おそらく一生平行線だろう。お互いに同情した方が易いかもしれない。
「なぜ王はあんなに自分勝手で我が儘で理不尽ないきものなんだ!」
クロヴィスの魂の叫びに、残念ながらルルーシュは言い返す術をもたない。