※全員の性別が逆転しています。
※ノリはギャグです。
※ご注意下さい。



【逆転したかもしれない我が楽園へ!】




「おはようございます、お姉様。」

何とか平静を取り戻して朝食に向かったルルーシュを向かえたのは愛しの…弟だった。うん、分かっていた、と肩を落としながらルルーシュは声だけいつも通りで対応した。弟であれ妹であれ、大切なナナリーには変わりない。いつも席に着きながらルルーシュは笑顔のナナリーを見つめる。

「おはよう、ナナリー。」

そして何故か当然のようにスザクが自分の前に座った。目の前にはきちんと朝食も置かれている。何故…、という疑問は二人の会話に掻き消された。

「聞いてよナナリー、またC.C.がさ。」
「お姉様の部屋にいらっしゃったんですか?いいんですよ。C.C.さんは。」
「よくないよ!ルルーシュの身が危険にさらされても、君はいいの!?」
「いいんです。C.C.さんはお姉様と将来を約束して頂いていますから。僕、お姉様が幸せな生活を送るための応援なら、何だってします。」

・・・・・・・・・・・・・・・・口が、挟めない。

「でもそのために男と同室を許すなんて、そんなの…間違ってるっ!!」
「僕の許可もなくお姉様の寝室に入るスザクさんにそんな事言う権利はありません。」
「だって僕達友達だよっ!?それに女同士なんだから気にする事なんてっ・・・!」
「女同士だからといってシャワールームにずかずかと入り込むあなたの方が僕にとって危険因子です。」

スザク、そんなことしてたのか…、と思いつつ大いにあり得そうだった。一体この会話のどこから俺は突っ込むべきか全く分からない。タイミングどころかツッコミどころが分からない。取り敢えず言おう。何もかも間違っている。

「僕は女だけど!軍に入って鍛えてるし武術も一通りおさめてるっ!C.C.よりずっと頼りになるよっ!」
「そうですか。では、結構です。」
「なんで!!!!?」

二人の朝のほのぼのとした会話を聞きながら、俺は一つだけこれは確かだと思った。

(俺…、男で良かったんじゃないか?)

その呟きは残念ながら誰にも拾われることもなく、時間は過ぎゆく。




→「ナナリー、スザクって昔からああだったか?」
→「えぇ。あんな感じですよ、お姉様。」




【逆転したアッシュフォード学園へ!】




「おはようルルーシュ!」

そう言って一番に挨拶してきたのはシャーリーだった。当然のように男子制服を着ているが、それは既に女子制服を着ているスザクが隣に並んでいることで耐性はついた。取り敢えずいつも通り完璧な笑顔を貼りつけて挨拶し直す。

「おはよう。」
「宿題やって来た?今日は一限の数学、当たる番だろう?」
「あぁ勿論やって来たよ。なんだシャーリー、もしかしてやってきてないのか?」
「えっ!?まっ、まさか!そんなわけないだろう!部活が忙しくても、勉強は疎かにしないよ!」
「ふふっ、そうだったな。シャーリーは俺と違って真面目だもんな。」

慌てる様子が普段の彼女と全く変わりが無くって、何だか癒される。朝から散々性別の変わったスザクに揉まれたがやっぱり違和感はぬぐえなかった。(中身は驚く程変わってなかったけど)しかしシャーリーは性別が変わっても雰囲気が変わらない。妙にくるくる動いて真面目で誠実なところとか。普段はあまり何とも思わないが今はもの凄く救われる。堪えきれずにくすくすと笑ったルルーシュを、シャーリーは真っ赤な頬で見つめていた。そんな二人の間をスザクは三度程見回す。

「ルルーシュ、昨日数学の時間居眠りしてただろ?」

だからきっとシャーリー、ノート貸してくれるつもりだったんだよ。とスザクがこそっと耳打ちした。それを聞いてルルーシュが納得し、益々シャーリーが赤くなったのは言うまでもない。

「とこ、ろでさ…///今日はちゃんと放課後まで学校にいろよ?会長が恒例のお茶会開くから。」
「もちろんいるよ。会長はサボると怖いからな。」
「居眠りも禁止だからね?」
「お前は一言余計なんだよ…。」

あぁ、本当にいつもと変わらない。日常の会話。これでせめて、

「体育も見学禁止だよ?今日はプール開きなんだから!」

せめて俺の性別が元のままでありさえすれば…と、

「えっ、今なんて言った?」

スザクの一言に、俺は文字通りぴしりと固まった。




→「プール!?そんなこと聞いてないっ!!!」
→「HRの時間に居眠りしてるからだよ。」




【逆転したまま水の中へ!】




水着を忘れました。そんな言い訳は通用しない。何故なら体育は午後から。クラブハウスから通っているルルーシュは休み時間に取りに行ってこいと言われるだろう。言われる前に取りに行った俺を、誰か誉めてくれ。部屋にはいると当然のようにC.C.が女物の水着を手渡してくれた。

(ありえないっ!!!)

これは地獄のような光景だ。普段は色気も何もなく、むしろ暑苦しい野郎共の群れ。それが突如女体の集団と化すこの地獄をっ!しかも顔は全員よく見知った男のものだ。ルルーシュは心頭滅却すれば火もまた涼し、の精神で一言も喋らずに水着に着替えた。その際、なるべく自分の体を見なかったのは当然の事と言えば当然の事だ。

「それじゃあお先にっ!」

そしてスザクやリヴァルの体もできれば見たくない。ルルーシュはそそくさと着替えるとすぐに更衣室を飛び出た。問題を先送りにしているのは分かるが、なるべくなら後の方まで取っておきたいんだっ、と自分に言い訳しつつプールサイドへと向かう。プールサイドには既に着替えを終えた男子達(正確にはもと女子だ)が雑談にいそしんでいた。だがルルーシュがそこに姿を現すと、ほぼ全員の視線が一斉に集中する。

(なっ、なんだ!?一体なにが!?)

熱っぽく見つめる者や思わず顔を背けてしまう者、反応はひとそれぞれだが一様に何だか気まずい雰囲気が漂っている。この状況を正しく理解できなかったルルーシュは、C.C.の言うとおり本当に自己認識が足りないのだろう。彼らの視線はルルーシュのすらりと細く白い手足や、胸から腰へかけてのライン、折れそうなほど華奢でありながら柔らかな肉体へと注がれていた。ルルーシュは今、自分が絶世の美少女だという事実を忘れている。

「おはよう、ルルーシュ。」

そんな風に不可侵にされているルルーシュにこの状況で声をかけてきた者が一人だけいた。振り返ると学園では病弱設定のカレン。病弱らしくひとり体操着である。だがやっぱり背は自分より高いし顔つきも精悍だ。肩に触れるか触れないかの髪は後ろで一つに束ねられている。

「おはよう、カレン。学校来てたんだな。」
「午後からね。ルルーシュも珍しいな、真面目に体育に出てるなんて。」
「俺だってできるなら見学したかったよ…。」
「ふぅん…だったらすれば良かったのに。」

そう言うカレンの口調は、そっけない。が、いつもと明らかに響きが違う。普段ならちょっと嫌みっぽく言われ自分も嫌みで言い返す。なんだろうこの違和感は、とカレンの瞳をじっと見つめるとふいに視線を逸らされた。そしてそのまま何も言わずにすたすたと歩いていってしまう。なんだ、今の?

(なんで…顔が赤かったんだ…?)

深く追求すると怖そうなので、何となく出来なかった。




→「(あー、もう!アイツなんであんなに細くて白いんだっ!!?)」




【逆転した生徒会室へ!】




ついにこの時が来た。ルルーシュは動悸息切れを抑えつつ生徒会室に踏み込む。恐らく一番厄介であろう人に対する覚悟はできている。何が来ようとも俺は耐えてみせるだろう、と意気込みだけは素晴らしかったルルーシュは

「今日も可愛いねぇー!ルルーシュ。」
「ほわぁぁ!」

いきなり抱きついてきたミレイに勝てるはずもなかった。世の中まず行動だ。そんなことルルーシュが一番良く分かっている。だが頭の回転に行動速度がついていかないのがルルーシュという人間だった。腰に廻されている手を振り解く事なんて勿論出来るはずもなく、体に走るむず痒い感覚と戦いながらミレイを見遣る。短い金髪に青い目がきらきらと輝く、控えめに見ても爽やかな美少年だった。

「今日はプールだったからルルーシュ来ないじゃないかって心配してたんだよ〜。」
「逃げられるはずないって、分かってるくせに…。」
「もう可愛いなぁ、その反応v」
「会長…いい加減にルルーシュから離れてください。」

ミレイの暴走に待ったをかけるシャーリー。このポジションは変わっていないらしい。シャーリーはミレイの強行に冗談抜きに焦った顔をしながらルルーシュの体に廻された腕を引き離す。男の力強い腕から漸く逃れられたことで、ルルーシュはほっとため息をついた。そして生徒会室を見渡すと、何だかもの凄いものが見えた。

(どうしたというんだっ!?カレン!!!)

病弱設定のカレンが顔に濃い影を刻みつつ、傍目に見て感じ取れる程物騒なオーラを放っていた。会長に気があるらしいリヴァルがちょっと複雑な顔をしているのはいつものことなので問題ない。だがカレン、お前のその普段と違いすぎる態度はどうしたことだ。

「カレン…気分でも悪いのか?」

そして至った結論はカレンの気分が悪いと言うこと。虫の居所が悪いと言った方が正確かも知れない。ルルーシュの思考回路ではその辺りが限界だった。

「さぁ、きっとお腹が痛んだよ。」

ルルーシュの疑問に答えをくれたのは、何故かカレンと親しいとも言えないスザクだった。心なしか声が冷たかったから気になって後ろから付いてきていたスザクをルルーシュは振り返る。そして思わず悲鳴を上げそうになった。

(お前こそ!何事だそのオーラはっ‥!!?)

どす黒いオーラを纏い、笑顔を振りまく幼なじみにルルーシュは声を出すこともできなかった。 そんな二人を面白そうに見守っているのは、もちろんミレイ。


拝啓、生徒会室はいつもと変わらず平和です。




→「やっぱり…ろくな事がなかった。」
→「お前がニブいからだろう。」




【逆転した黒の騎士団へ】




「はー…。」

溜め息をついたところでこの状況がどうなるわけでもない。ルルーシュはいつもの変装セット込みの鞄を持ち上げる。今日は黒の騎士団の活動日だからだ。そして性別が逆転しているC.C.はというとさっさと私服に着替えて、どうやら珍しくルルーシュについてくるつもりらしい。ルルーシュとしてはどう見ても自分が来ていたとしか思えない男物の服に袖を通されていることに突っ込みたかった。

「気が重い…。」
「なんだ?今更ぐだぐだ言っても仕方ないだろう?」
「全ての元凶に言われたくない。」
「この程度の状況に即座に対応できないなら、ブリタニア崩壊への道程も遠いな。」

この状況をこの程度ですませて欲しくない。自分が今まで生きてきた中で培ってきた常識とか倫理観とか全部ひっくりかえされたこの状況をっ!とルルーシュは叫びたかった。だが一日で気力を使い果たし、最早それすらできずに肩を落とすだけ。とぼとぼと部屋を出ようとするルルーシュの後ろを、C.C.が付かず離れず付いてくる。

「今日は何をするんだ?」
「こんなところでそういう話をするな。」
「いいじゃないか。誰の気配もしない。」
「・・・・・・・・・今日は作戦会議だけだ。」

なんだ楽だな、とC.C.は肩をすくめる。お前は楽だろうな、とルルーシュは思う。何せ考えるのも指揮するのも全てはルルーシュだ。ルルーシュは今日の作戦会議の様を頭の中でシュミレートしながら、進行具合を計算していく。そして作戦会議の様を脳内でシュミレートしながら、ふとあることに気付いた。

「おい、C,C,…。」
「なんだ?」

ルルーシュの顔は段々青くなっていく。それは、もう、倒れるのではないかというぐらい真っ青になってC.C.を振り向いた。そこに「どうした、生理か?」などというデリカシー無いこと極まりない質問が投げかけられたことは伏せておこう。

「まさかとは思うが、扇や玉城達も女になっているのか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「おい、まて。自分のしたことだろう!?何だその沈黙はっ・・・!」
「安心しろ、ルルーシュ。」

たっぷりの沈黙の後C.C.が告げた言葉は、確かにルルーシュも同意できるものだった。


「私もあいつらの女姿は、想像したくない。」


そして「故に私が耐えうる奴だけ性別を変えておいた。」と続くC.C.の言葉に、一体それはどいつらだとルルーシュは戦々恐々と本部に向かうことになった。




end?