簡単に善意を投げかけるな!
まず振り返って!胸に手をあてて!
それは一体誰のためだ!!?
【過失致死罪】
枢木スザクという人間はそんなに人付き合いが上手い方ではない。
というのはここにいる誰しも一致する見解だろう。
誰にでも優しいよ。
お人好しではある。
お節介の間違いじゃ?
あれで結構立ち回りが上手い。
そのくせ感情に流されるから・・・。
わりと気まぐれ。
もっと上手く言うなら、ムラがあるというのだろうか。
『つまり性格は器用なくせに生き方が不器用なのだ。』
口々に出てくる意見をご丁寧にもまとめ上げてわざわざ本人に申告してきた人間の方こそ、その言葉を地でいく人間だろうとスザクは思ったが敢えてその事については言わない。それよりも、その報告と一緒に自分にもたらされた品にこそ何かもの申すべきだろう。何の悪気もなしに、にこにこと微笑む男の手には悪気があるとしか思えない物が握られていた。
「何ですかこれ?」
聞かなくても分かってる。しかし、敢えて問おう。
「エロ本。」
うん、分かっていたんだけど。僕が聞きたいのはその先で・・・
「枢木は結構人間関係希薄だから青少年らしく好きなヤツとかいるのかな、という話になってさ。」
いらぬ世話です。
「まぁそんなわけで話し合いをしていたら、お前と同室のヤツが、好みのタイプを漏らしていたというじゃないか。」
漏らしたのではなく、聞き出されたのだ。言うまで黙ってくれそうになかったから仕方なく好きな子の外見的特徴と大雑把な性格説明を、死ぬほど疲れた訓練のあった夜中に。「ツンデレ系か?」とか訳の分からないことを聞かれたけど流しておいた記憶がある。
「黒髪で肌白くてちょっときつそうなお姉さんを選んでおいたから。」
全然似てない子で解消するぐらいなら、頭の中で妄想でもしてます。
「探すの大変だったんだぞ!?」
知りません。
「みんなからの気持ちだ。存分に楽しんでくれたまえ。」
どう考えても僕よりアナタ達のほうが楽しんでるでしょう!!?
楽しそうな男は僕の手の中に強引にそれを押し込める。どうあっても、受け取らねば事は無事に済みそうもない。どうも・・・、と引きつった笑いを浮かべて、それでも自分としては最高に穏やかに礼をすませた。やけに嬉しそうに去っていく、男の後ろ姿。
感謝する気がないとはいいません。
普段和やかに会話の輪に交ざる事のない自分を、ここまで気にかけてくれるなんてある意味ありがたい心意気でしょう。円滑に人間関係を進める上では大事だと思いますよ。アナタみたいな人がいるから世の中成り立ってるところもあるんでしょう。
認めます。それだけはっ!でも・・・・!!!
「余計なお世話だっ!!!!!」
透き通るように肌の白い、黒髪の美女ひとり。
恨めしいのは自分の想像力。
end