【共に、生きてくれますか?】
「彼らの言い分は独善にすぎない。」
怒気を孕んだ自分の声がやけに遠く聞こえる。椅子に腰掛け、時折こちらを伺いながら、それでも開いた雑誌を閉じようとしない君に向かって放たれる声。訴えかける様に必死になって弁論を奮う僕に、君は息を呑むでもなく、ただ淡々と答えを返してくれる。その答えを聞く度に、自分の声のトーンが下がっていくのがよく分かった。
苛々している。いっそ不自然なほどに。
突然こんな風に声を上げた僕を、君はきっと内心訝しんでいることだろう。それとも、いつも通り『正論』を奮っているだけだと片づけてくれるか?そう、僕は『正論』を言っているだけなんだ。それが、今の自分だと知りながら。
「彼らが言う悪って何だい?何を基準にしているかも分からないじゃないか。」
なんて声で、僕はその言葉を口にするのだろう。
『独善』?『何を基準に?』あぁ、そうだね、所詮何もかも
「一方通行の自己満足だよ。」
それは自壊の言葉。
全てそうだと知りながら、口から出る言葉はとても滑稽だ。
大多数の人間にとっての『正義』であればいい。『独善』であっても、支持を得ればそれは『正義』に変わる。何を基準にしているかなんて、本当は問題じゃない。半分以上は、人の綺麗すぎる夢なのだから。
でも僕はせめて
君にだけは認めて貰いたい。
「ブリタニアをぶっ壊せ」とあの日と変わらない瞳で言った君に。
「黒の騎士団」の名を好意的に口にする君に。
「警察」を否定して眉を顰める君に。
どうかこの場所を離れないでと願う。
ここにいて僕を待っていて欲しいと願う。
僕の手を離れていかないでと願う。
だからどうか、ルルーシュ。
僕を待っていて。
全て僕に任せて。
君はその綺麗な指でいつも通り本を捲り、ナナリーを慈しみ、僕に触れてくれればいい。命を持たない武器は僕がこの手で引き受け、葬り去るから。全てが変わるその日まで。
ルルーシュ、僕の言葉に耳を傾けて。
僕は世界中の誰よりも君に認めて欲しい。
今、僕を怒りに駆り立てるのは何より焦燥と不安なんだ。
end