※R18です。
※ルルーシュ女体化注意。





【嗚呼、麗しの愚者よ!】





綺麗だ。
この世のものとは思えないぐらい。

全くの偶然で手に入れた獲物を前にジノは心の中でそう呟いてた。政庁内で自分に与えられた部屋、その寝台に片膝を置く形でジノは、彼だと思っていた彼女、を見下ろしていた。

ゼロ。

ブリタニア帝国への希代の反逆者。彼を捕らえられたのは全くの偶然だった。常に緻密な作戦で自分達を翻弄する彼をただの偶然だけで手に入れられたなんて誰も信じないかも知れないがそれは事実であるし、他人がどう思おうがジノには全く興味がない。ただ手に入れられた、という現実があればいいのだ。

そして常ならそのまま軍全体へ確保の知らせを入れるところだが、ジノは自分の同僚である枢木スザクが彼に執着しているのをよく知っていたが故に止めた。あれだけ誰にも譲るつもりはないと覇気を見せていた彼が、自分以外の人間の手にゼロが捕まったと分かれば、その上晒されたとなればどうなるだろう、という事は予想するまでもない。その程度にはジノは枢木スザクという男をよく知っていたし、きちんと思い遣っていた。
それならまだ自分一人の手を経ているぐらいが増しだろうという思考の元にジノは彼をナイトメアに乗せここまで運んできた。どのみちゼロがいなくなれば黒の騎士団がその行動に支障を来す事は分かり切っていたし、実際今はその通りになっている。

そして身体検査と当然の権利として仮面を剥ぎ服を引き裂き、ジノは冗談抜きで言葉を失った。

黒い髪。紫と赤のオッドアイ。雪のように白い肌。

ブリタニア人の顔立ちだったがそれだけならまだ軽い驚きで済んだだろう。けれどそれらが構成する造形を見て、ジノは息を呑んだ。

あまりに、美しかった。

絶世のと言って差し支えない。人とは思えない程の美貌を前に言葉は無力だ。ジノは神が精魂込めて彼を作ったのだと誰かに言われても信じただろう。むしろそう言ってくれた方が心が落ち着く。自分と同じ人間であるなんて、到底信じられなかった。そしてそれを見た瞬間、あれほどスザクが執着している理由を悟った。

人の魂を吸い取るほどの美貌。

その美貌だけでも充分に驚愕に値するのにジノは服を引き裂いてもう何も言えなかった。月明かりだけが唯一の光源となる部屋で、宵闇の衣に包まれた白い体躯が眩しい程の輝きを放っている。その肌の美しさだけでも目を見張るものがあるが極めつけはその体つきである。どう見ても、女にしか見えなかった。

「女…、だったのか。」

円やかな体付き、手で触れれば吸い付くような滑らかな肌。華奢な骨格に細い体躯に見合うように胸は控えめなものだったがそれでも形は充分に美しい。そしてあまりに細い括れから腰へと向かい小作りな臀部へと続く曲線、すっきりとした脚線。年齢的にまだ女性としては未成熟だがいっそ艶めかしいと言っていい。

思わず陶酔してその体を撫でていくジノに対して、ゼロは微かな吐息さえ漏らさなかった。

ジノは自分を見つめるゼロを見てその手を止める。正体を暴く時ですら彼女は一切身じろぎしなかった。それが潔いと言えばいいのかは微妙なところだ。ただ今は後ろ手に縛り上げ足を拘束している為抵抗は出来ない。自分が非力な事は重々承知している様だ。何も言わずじっと自分を睨みつけている様は状況を把握しようとしている様に見える。敢えて隠す事もない、とジノは彼女の期待に応えてやる事にした。

「ここは政庁だよ。」
「軍の拘置所には見えないな…。」

仮面越しでない声は女としては低い。けれど落ち着いた響きを持っていて妙にその様相と合っていた。耳にも心地よい。またその声を発する唇も紅く彩りがある。ジノは口元に笑みを刻み込んで彼女の疑問に答えてやる。

「まぁ、私の部屋だからね。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・随分権限の大きいことだ。」
「これでもナイトオブラウンズだしさ。NO.3、ジノ・ヴァインベルグ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・。」

ゼロは黙りを決め込む。恐らくは自分を捕らえたのが目の前の男だけなのかを探っているのだろう。幾らナイトオブラウンズとはいえゼロを個人的に拘束する権限などない。そして自分を捕らえた事を知るのが自分だけだと、そういった確信を得られれば何か行動を起こすのだろうとジノには予測できた。生憎そこまで喋る程自分はお人好しではない。

「枢木スザクって知ってる?」

だからこそジノは話の矛先を反らした。唐突とも言える質問に、ゼロは無反応を貫き通した。ただ抑揚のない声でその事実だけ認める。

「やっぱり、知り合いなんだ。」
「過去自分を捕らえた男の名前ぐらい覚えているさ。」
「そういうことまで喋るんだ?」
「…見誤る程愚鈍では無さそうだからな。」

それは以前のゼロと現在のゼロが同一人物か、などという陳腐な問いだ。未だに国の人間にはその事実を否定する輩が多い。何しろ処刑という公式発表があるからだ。だが多少なりと目の肥えた、また実力のある人間がその事実を見誤ることはない。ジノは割合直接的に誉められた事を嬉しく思った。話していて楽しい、そんなことすら思った。

「聞きたい事があるんだけど、いいかな?」
「尋問なら勝手にしろ。」

質問せずにそう前置きをしたという事はそれが答えないと予想されるであろう質問だと分かったのだろう。賢い人だ。そして一切の弱さを見せない。けれどその割り切った態度がいっそ憐れでもある。敵に情けを掛けるほどジノは使えない人間ではない。ただ囚われそうになっている一人の男としては。

「私としてはそういう無粋な手を使いたくないんだよなぁ。」
「フェミニストなことだ。」

今度は全く誉められていない。それもジノはよく分かった。けれど気にせずにベッドサイドに置いておいた薬を取り出す。リフレインなどの麻薬を打つ時に使われるのとよく似た形状のそれをちらつかせ、ゼロを見下ろす。それでも全く表情は動かさない。ジノは苦笑して中途半端に体に掛かった服を脱がした。白く艶めかしい腕に思わずごくりと喉が鳴るのを無視し、その滑らかな肌へ針を突き刺した。薬がゆっくりと体内へと入り込んでいくのを見つめる。何となくゼロと目は合わせられなかった。

「…知りたかったことがあるんだ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「枢木スザクはお前に執着している。ゼロを殺すのは自分だと、ずっと言っていた。で、ここからは私の単なる勘なんだが…。」

きっとこれは余計な質問だ。真っ当な尋問とは何ら関係のない個人的な好奇心に基づくもの。けれどゼロの姿を真正面から捉えては聞かざるを得なかった。そんな風にこれから自分がしようとしていることを考えれば言い訳もしたくなる。

彼女と、スザクの因縁はそれだけか?

ただ一回限りの捕獲者とその獲物の間柄には見えなかった。それほどスザクの執着は異常だと言える。ゼロがしたことを考えれば当然だと思いつつも、何がそこまで彼を追い立てるのかとジノは時折不可思議に思いながら見ていた。そしてゼロの正体を知ってしまって、その曖昧な疑問は確信へと変わった。けれどそれはジノが割り込むべき問題では全くない。さっさとスザクに彼女を渡してやって、それから彼に質問すればいい。答えて貰えないならそれで終わり。だからこれは。

「なぁ、スザクはお前を抱いたか?」

これからすることは単なる劣情の昇華だ。

透明な催淫剤が彼女の体に吸い込まれていくのを、ジノははっきりと情欲に濡れた瞳で見ていた。



*



「答える気になった?」

尋ねたところで答えなど無い。分かっていたが敢えて事務的にジノはそう尋ねた。そして数秒待つも時折息を吐き吸う、大袈裟な音が聞こえるだけである。けれど落胆の色一つ見せずジノはそっと瞼を閉じた。そして場にそぐわぬように体の力を抜くと寝台よりずっと柔らかく温かい存在へと全てを預ける。無防備な姿は襲われる可能性が全くない、と理解しているからこそだ。体重を落とした瞬間びくりと大きく震えた躯は今尚小刻みに振動を伝えている。逃げることすらできそうにないこの華奢な肢体が一体全体どうやって自分を脅かすというのだろう。自問し否と答え、ジノはまた徐に瞳を開いた。

「綺麗だな。」

感嘆の声は賞賛する相手には決して届いていないだろう。きつく瞼を閉じ自分と目を合わせる事を拒絶した相手は眦から生理的な涙を流し、苦しげに胸を上下させている。左手は自分の掌の中、右手はシーツを指が蒼白になるほど握りしめ細く滑らか両脚は時折空を蹴りながら快楽への抵抗を示してはひくひくと震えていた。冷たい抵抗を受けながらも、ジノの心は不思議な程熱い。それが痛い程高鳴る動悸のせいなのか、この熱すぎる体温のせいなのか判然としないまでも自分の胸が温かい気持ちで満たされているという事実一つでジノには充分だった。

「なぁ、気持ちいい?」

そんなこと躯に聞けばすぐ分かる。けれどまた敢えて言葉にして問う。すると繋がった部分がきゅっと締まり応えるのだ。薬のせいでぐずぐずに濡れそぼった蜜壺は自分を一切拒絶する事はない。指でほんの少し解し、押し入る時でさえ大した反動も無く痛い程の快楽と引き換えにしてそこは自分を受け入れた。今も柔らかく不規則に自分自身を締め付けている。 そしてその時の反応で彼女が処女ではないことは確認できたから最初の質問の答えはもう既に得ていた。これだけ美しいならスザクではなくとも、きっと誰かと繋がったのだろうと想像は出来たがそれでも彼女の躯を開いたのはスザクだとジノには妙な確信があった。何故かと理由を聞かれたら困る。単なる直感だ。何となく、スザクも今の自分と同じ状態に陥ったのではないか、という気がした。

「いい加減名前教えてくれない?」

なるべく優しい声で呟くとジノは彼女の震える唇を指でなぞった。あまりに快感が強すぎるせいか歯の根が合わずただ艶めかしい声を発するだけの唇は唾液のせいか光に照らされ妖しく光っていた。指先でなぞる滑らかな感触に赤い紅い色、そこから覗く舌。堪らない。正しく目の毒だ。戦慄く唇をじっと凝視していると彼女が漸く瞳を開いた。今更挑む気はなかったのだろう。ただ射抜くように赤い光彩が強く自分を見止めた。その瞬間、自分の理性が引きちぎられる音を聞いた。

「あ、っ・・あァ・・・!!」

最奥へと挿入してから動かずにいた躯を起きあがらせると引き摺られるように自身が外へと出る。ジノはその拍子に浮き上がった腰の下に腕を滑らせると勢いを殺さずまた中へと押し入った。ぐちり、と卑猥な水音が甘い嬌声と共に室内に響く。細い躯を逃がすまいと抱きしめながら、一定の間隔を開けて数度抜き差しを繰り返していく。

「はっ、ひゃ…、う、あっ、あっ…!アァ!」

薬によって溜め込まれていた快楽が堰を切って溢れ出してきたのだろう。その華奢な身には過ぎた感覚に拒絶するように頭を振った事ではらはらと黒い髪が舞い散る。けれど拒絶の言葉は無く繋がった部分は自分を乞うように蠢くせいかジノはぞくりと背筋が震えたのを感じた。体内を暴れ狂う熱に鮮やかに赤く染まった白皙の体と対の宝石のような瞳、蝶の羽根の様に繊細な黒の髪、その全てが自分を受け入れている思うと今までに無い程の愉悦を知り得た。それが薬のせいだと分かっていても、抗えるわけもない。

「気持ちよさそうだね。」

言葉には余裕を持たせるが、体の方はそれに従えそうもない。実際、薬を使っていない自分の方が獣の様に本能に忠実になっている。折れそうなほど細い腰と肩を抱き、緩急を付けながら腰を振る。大きく骨ばった自分の手なら片方だけで掴めそうな程小さい胸へとしゃぶりつく。立ち上がった乳首を指先で舌で捏ねては潰し、舐めては口内の柔らかな感触を存分に味わう。乳香が塗ってある訳でもないのに甘い体は自分を夢中にさせる要素としては充分すぎた。

「あぁ!あ、あ、うんっ…!はぁ…っふぅ!!」
「質問、しようか?」

そう言いながら本末転倒にも唇を塞ぐ。唇を優しく噛み、角度を変えて深く口付けた。そして逃げる舌を絡め取り、上顎と歯列をねっとりとなぞっていくと彼女はびくびくと敏感に反応してくれる。どうやらこの行為に弱いらしいと分かると、ジノは遠慮無く舌を吸い上げ自分の唾液を小さな口へと注ぎ込んでいった。そして口の端から飲みきれなかった唾液が溢れ出ていく様を澱んだ蒼い瞳で観察する。悪趣味だな、と思いながらも口内の粘膜が麻薬のように自分を誘い止められない。
堪能した後に質問の言葉を口にしようとしたのだが中々止める切っ掛けを得られないままに上と下の粘膜を同時に犯していると、やがてその感覚に耐えられなくなったのか彼女がジノの短い髪を引っ張った。初めての拒絶らしい拒絶に、ジノは漸く唇を離してやる。その顔には堪えきれない笑顔が浮かぶ。嬲りすぎて熟れた唇と、未だに自分を睨み付ける瞳が可愛い、と思ってしまうのだ。そして突っぱねるようにジノの両肩に当てられているその細い両手も。

「答えたら、止めてやるよ。」
「はっ、…ああああっ!!!」

きっと答えて貰ってたところで止められそうにない。それでもジノは宣言だけすると左の膝裏をぐいっと持ち上げ同時にずん、と腰を打ち付けた。体が壊れてしまうのではないか、と思う程強い力で遠慮など全くしなかったせいか、その一度で彼女はいってしまったらしい。耳に残る様な甘い声。ジノも引き絞るような膣の動きに釣られそうになったが腹に力を込めて耐える。吐き出せる程熱は充分に堪っているが、それでも最高に気持ちいい所で解き放ちたい、と心が望んでいる。まだそんな理性があったのかと苦笑しながら額に汗を浮かべ、断続的に痙攣する体を見下ろした。最奥へと自分の猛ったものを穿ったせいか、震えは簡単に収まりそうにない。

「質問その一だよ。名前、教えて。」

まだ意識の朦朧とする彼女へとジノは再度同じ質問を繰り返す。当然の様に答えはないのだが、その強情さを心地よいと思ってしまう。ジノを深く繋がった箇所を敢えて擦ることはせず、一番最奥を亀頭で乱暴に掻き回した。律動とはまた違うその動きは覿面だったらしく、びくんと体が跳ね上がった。

「俺としては抱いている女の名前が分からないのは嫌なんだよね。」
「・・・・・ぅふ、くっ!ん!…んんっ。」

ぐちゅ、ぐちゅ、と奥を掻き回されるたびに下腹に力を込めて耐えようとしているのをジノはじっと見下ろしていた。そんなことをしても中のものを締め付けるだけで、逆効果だというのに。ジノは性器の形を確かめるようにして動く内部の気持ちよさに熱い吐息を吐いた。そして焦らすようにゆっくりと、ねっとりと動いてやる。

「スザクは知ってたんだろう?」

同じ女を共有して抱く趣味はジノにはない。ただ興味本位に過ぎない質問をしながらそれに必死で答えまいとする彼女の反応を楽しむのだ。本当に悪趣味だ、と思いながらジノは下半身に緩く前後の動きを加えていく。

「スザクは良くて、俺は駄目な理由でもあるのかな?」
「あっ、あっ、あっ!」
「可愛い声。」

それに厭らしい体、と呟くとジノは弱い部分をぐいっと押し上げた。

「いやあぁ!!!」

初めの拒絶の言葉にジノは思わず歓喜を感じた。彼女はその言葉が不覚だったのか、直ぐさま口を両手で塞ぐとぐっと耐える様を見せた。それでも声は止まない。細く形良い指の下から漏れるくぐもった声に、いっそ過敏なほど反応してみせる彼女に愛しい気持ちさえ芽生える。あぁこれはもう駄目だ、と冷静に思った。

快楽に弱いくせに全く慣れていない躯は与えれば与える程素直に開いていく。

こんなに綺麗なくせに、厭らしい癖に、満足に男を受け入れる方法すらしらない。処女ではないがそれでも本当にたった一度しか抱かれていない様に見えた。なまじ幾らか男を受け入れたせいで、初めての痛みを知らない。ただただ快楽を教え込むことのできる状態にされている。暴くのとはまた違う、開発する楽しみ。そこに大きく貢献しているのは、この高潔な精神だ。

堕とそうとしても決して堕ちる事はなく、汚そうとしても決して汚れることはない。

強く気高く、折れる事のない心。それが男の嗜虐的な気持ちを存分に引き出してしまう。けれど手折る事が楽しいのではない。自分の汚い部分を何処までも受け止められる、そう思わせてしまうのだ。そしてそれが非常に問題だった。

自分やスザクのように、自身を弱いと、根底で汚いと思っている人間には。

改めてスザクに聞くまでもない。どんな気持ちになったかなんて、この瞬間に理解できた。抱きたい、抱きしめたい、自分を、抱き留めて欲しい。全身で自分を受け入れて欲しい。浅ましい程、汚く弱い懇願だ。

溺れる、と素直に思った。

「ゼロ。」

それしか知らないからその名前を呼んだ。本当は真実の名が知りたいと思ったけれど恐らくは最後まで応えない事も分かっていた。短い、無の名前。その時だけは何となくスザクが羨ましかった。きっとこの後彼女を渡せばスザクは彼女を抱くのだろう、と確信していただけに。本当の名前を呼んで、幾度も幾度も。

そう抱くのだ。今自分が抱いているこの体を。それでいいのか?とジノは自問自答した。

「ゼロ。」
「ひっ…!!ああ!」
「愛してるよ。」

突き上げ、跳ね上がった脚を抱え上げるとそのまま乱暴に体勢を入れ替えた。彼女の体をうつぶせにして、腰を高く上げさせる。そして口をシーツで塞いでしまわないように上半身も支えてやる。そうしたのは何も質問の答えが聞きたいからではなかった。ただ声が聞きたい。それだけだ。そして後ろから激しく腰を打ち付ける。単純に欲しいと思うばかりで、一切の余裕など無かった。

「ひゃ!っあん!…くっ、う、あ・・・・・んんっ!!」

ずっ、ずぐ、ぐちっ、ぶちゅっ。卑猥で生々しい陵辱の音。自分と彼女の体格差は余りに大きく、そして自分が何の加減も無く抱けばそれだけで多大な負担を強いる事もジノはよく理解していた。だから大抵は最後の所で糸を張っている。超えてはいけないと自分で決めた境界線。けれど一度登り詰める直前で我慢した体はもう言う事を聞きそうになかった。一番良いところでなんて贅沢、追い求めなければもっと優しく抱いてやれただろうか。そんなことを考えても杞憂に過ぎるけれど思わずにいられなかった。今自分はそれほど激しく彼女を抱いている。

「あアぁっ!うぅ…ん、はっ、!はぁ…っ!やあああっ!」
「ゼロ。ゼロ、」

何度も崩れ落ちそうになる体を支え、肉付きの薄い綺麗な背中に唇を落とせば白い肌には面白いように痕がつく。左手で乳房を優しく揉み込み、右手の人差し指と中指を使い勃起した花心を扱いていく。あまりに直接的な刺激に、震える股を白濁とした粘液が幾筋も伝っていった。止まる事のない嬌声と愛液。どうやらひどく濡れやすい体質らしく、自身を挿入するたびに熟れた果実が爆ぜるようにして飛び散っていく。そのくせ中は狭く吸い付いてきて、絶えず自身に満ち足りた充足感を与えてくれる。相性が良いのか、それとも彼女の躯が特別具合が良いのか。前者だと思いたい。

「ああっ!はあ!…ん、じ、アぁっ!ジノ!」
「…っ!名前!?」

呼んでくれた、そう意識した瞬間ずくりと自身の質量が増した気がした。それにか細い、猫が鳴くような声を上げて彼女が反応する。酷くする、と思っていた端から彼女は残酷なことをさせる。行為の最中に名前を呼ばれて反応しない男などいないのに。

「うあっ!い、う、っあ!言う、からあ!!」
「はっ、そう…、言って。」

今更聞いたところで止まれるはずがない。それが分からないのだろうか?と思いそういえば自分が彼女に薬を使っていた事を思い出した。完全に意識が酩酊しているのだろう。ただ快楽から逃れたい一心だということは分かる。けれど最後まで聞けないと思っていた名前が聞けるなんて、と思うと純粋に喜びが込み上げてきた。だから呼吸する隙を作るために律動を止めてやる。それすら苦しいけれど彼女はもっと苦しいのだろうと、ジノは最早虚ろな光を宿している瞳を見た。

「る…るぅ、しゅ…っ。」
「ルルーシュ?」
「あ、ぅん。そっ、…抜い…てっ…!」

そろそろ、とゆっくり自身を抜いていく。焦らすように、身を焦がす快楽から逃れようとする彼女を見つめながら。そうして心の中でジノは聞いた名前を何度も反芻していた。

この先、二度と忘れる事がないように。

「そう。ルルーシュ。すごく…綺麗な名前だ。」

感慨深く呟くやいなや、ジノは叩き付けるようにして彼女の躯を貫いた。

「・・・・・・・っ!!!」

声もなく仰け反った躯を追い立てていく。ひっきりなしに喘ぐ彼女を抱きしめ、灼けそうな熱に我を忘れる。気持ちいい気持ちいい!それしか考えられない。ぐちゅ、ぐちゅ、と耳を犯す音。ぎゅっと自身を締め付けられる感覚。弱い粘膜を犯すたびに自分を求めるように啼く体が愛しすぎてどうにかなりそうだった。

自分が求める以上に求められたいと、ジノは危険な思考に手を伸ばしてしまう。

求めるのも求められるのも体だけなら簡単だ。けれど心は難しい。たった一度、この短い時だけ抱いたぐらいで手に入る訳はない。けれどジノは求められたいと思ってしまった。

「…ルルーシュ!」

そう思った瞬間に、やることは決まった。体中の血液が沸騰するような感覚の中で最後の一時へと登り詰める。ジノは限界まで研ぎ澄まされた肌で、自分の腕の中の彼女の温もりを感じていた。その柔らかく熱を持った体躯の内の、一番弱い部分へと自身を突き入れた。

「うあっ!あ!だめっ…!あ、い…、アアアアぁっ!!!」

びくん、と一際強く締め付けて果てた彼女の中にジノは吐精する。何もかも持って行こうとするような締め付けの中で腰を振りながら全て吐き出していく。そして自身を入れたまま、倒れた体を仰向けにする。いった余韻で震える彼女を優しく抱きしめ、荒い吐息を飲み込むような口付けを落とした。焦点を失った空ろな瞳に自分の姿を映すとジノはやがて満足げに微笑んだ。

「愛してるよ、ルルーシュ。」

本当に、愛してる。それは体と心を伴った、酷く単純な反応だったからジノは今更理由を求めようとは思わなかった。こんなものは感覚でいい。大仰な理由なんていらない。そして自分が彼女を求めるに足る熱い感情は確かに胸の中にあった。


「だからもう、スザクにやるのは止めにするよ。」


届くはずもない言葉を吐いて、ジノは再度ルルーシュを貪った。





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