※突発的に死にネタがあるのでご注意下さい。
幸せになって欲しいと願っても、幸せに出来ると思い上がれるほど傲慢ではない。
人の幸福を自分の物差しで測って、勘違いのまま手を伸ばそうとしたこともなく。
せめて笑っていて欲しいとそれだけを願って、あなたの傍にいた。
それなのにそれさえ叶えられない自分はなんと滑稽なことだろう。
心から愛して、それ故に大切なあなたを、傷つけてばかりいる。
そもそもこの汚れた腕で誰かを愛せると想ったことが間違いなのだ。
愛する人を幸せにしたいのに、なにひとつ護れはしないこの役立たずな腕よ!
血塗れの腕を広げたところで、誰が一体そこに飛び込んできてくれるというのだろう?
【ルルーシュ】
これは多分、後悔と懺悔。それも愚かな自分への!
おいていかないで。
おいていかないでください。
どうか、どうか俺を独りにしないでください。
この声が枯れるまで祈ったとしても、届かないと知って俺は叫び続ける。目の前に広がるのはがらんどうの空間で、ほんの少し前まで満たされていた場所を埋める術はない。悲しくて、それ以上に苦しくてはらはらと涙がこぼれ落ちた。剣を抜いた後もこれほど泣いたことはなかった。あの時は罪に、後悔に、懺悔に、心が引き裂かれそうになった。けれど苦しいと訴えるうちに、心は確かに在って、それは何もない苦しみには勝らない。
今僕の目の前にはなにがあるだろう。
塞がっていた両手は空っぽ。想いの分だけ伝えた言葉は空回り。守ると決めたものも、愛すると決めたものも、愛されることの喜びを教えてくれたものも何もない。俺の心は俺の物で、俺ひとりだけのものだけれど、決して俺ひとりで在れはしない。それを教えてくれた人は、僕の前からいなくなってしまった。
一生分の涙を絞り出したとしても得られるものは何もない。
でも泣く以外に何も出来ない俺を、どうか、独りにしないで。
【スザク】
誰も彼もいなくなってしまった。否、消したのは自分か。
床の上の赤い染みはどんどん広がっていった。それを何とかしなくては、と思ってついと顔を上げると、一本のナイフが深々と刺さっているのが見えたから抜いた。抜かなくてはいけないのと思ったから抜いた。あんなところの刺さっていては、彼が死んでしまう。それなのにぽっかりと開いた穴からまた赤い液体が溢れ出てきた。どうにかして止めたくて掌で押さえることにした。けれど指の間から掌の下から赤い液体は止まらない。ぎゅっと押さえ込んだら段々と止まっていって、安堵したのも束の間今度は抱き上げた体がどんどん冷たくなっていった。だから逃げていく体温を捕まえるために背中に腕を回した。それなのに止まらない。今度は止まらない。体が、冷たいのに、液体が暖かくて、赤い液体が彼から温度を奪い去っていくようで、だから床の上の液体をかき集めて、かき集めて掌で掬って穴の中に流し込んだ。何度も何度も、けれど掌では大した量は掴めない。何か効率よく液体を集められるものはないかと辺りを見渡した。すると暗闇の中から真っ白な服を着た女がひとりやってきた。真っ白な服を着た女は「何をしているんだ?」と問う。構っている暇は無かったから無視して辺りを見渡した。けれど何処にも役に立ちそうなものはなかった。仕方なく諦めて自分の手で液体をかき集めることにした。ぴちゃぴちゃという水音がたっている間、再度真っ白な服を着た女が「何をしているんだ?」と問うた。再度無視して何度も何度も同じ事を繰り返すと、真っ白な服を着た女は段々と近付いてきた。そしてすぐ傍で足音が止む。止んだけれど今度は何を言うでもなく、そっと佇んでいた。だからただ黙々と作業に没頭した。彼の体温は冷たくなっていったけれど、段々と下がり具合は緩やかになっていく。僕はこの行為が功を奏したかとほっと溜め息をついた。すると真っ白な服を着た女は笑いながら謳った。
「面白いな。流してしまった血を注げば、死んだ人間でも生き返るのか?」
人の夢を壊すようなことを言ってはいけないと、この女は大人から教わらなかったのだろうか?
【スザクとC.C.と物言わぬ人】
大抵人は後悔してから足掻く。取り返しがつかなくなった時ほどみっともなく。
人の死に慣れることはない。人を殺すことに慣れることはない。
人が殺されるのを見ていることに慣れることはない。
どんな崇高な理由があったところで、僕は銃の引き金を引くのにいつもひどく躊躇する。
それなのにほんの数pの動作に慣れたなんて、矛盾だろうか?
小さな室内のすぐ真下が、真っ赤に染まっている。
【誰か】
こんなことばっかりしてたら、それ以外無くなってしまった。